第7話 「夏空の色、水色の少女」
出だしの風景の作画1枚で丁寧さが伝わってきます。
文化祭で必要な物を小熊が以前にバイトで行っていた高校まで取りに行きます。小熊はカブに出前器、礼子はリアカーを取り付けて甲府の高校まで行きます。
原付がバカにされたからとはいえ、小熊がわざわざ自分からクラスメイトの手伝いを申し出たことや甲府の高校の国語教師と仲良く話していること、小熊の発する言葉ひとつひとつに小熊の成長が見て取れます。
リアカーに関してですら空気圧や軸受けなんて単語を使うなんて、小熊は完全にカブ乗りになってしまった証でしょう。椎(CV.日岡なつみ)にカブを語る小熊なんて悟りを開き始めてます。
甲府の高校に着いた際にも校内の受付に自ら行くなんて、第1話の小熊からすれば考えられなかったはずです。その他にグローブを買いにカーショップに行く時は、行きが礼子が先頭で帰りは小熊が先頭でしたが、甲府の高校に行った時には行きも帰りも小熊が先頭で走ります。こういったところにも小熊の成長を感じます。
今回特に共感を覚えたのは、礼子の「車やバイクがガソリンだけで動くと思っているみたいね。」というセリフです。まさしくその通りなのです!きっとこの言葉に頷いてしまった人も少なくないはずです。
第8話 「椎の場所」
今まではほとんどが小熊と礼子ぐらいしか出番が無かったアニメですが、今回は恵庭椎(CV.日岡なつみ)にスポットを当てた話となっています。
椎はカブ乗りではないですが二人と同様にこだわりを持っていて、その対象がイタリアです。エスプレッソマシンを自分の貯金を使ってまで買うほどです。そのエスプレッソマシンで淹れたコーヒーを飲むために椎のお店に行きます。
椎と椎の父の淹れたコーヒーを飲むシーンでは、飲む前と飲んだ後の画面の明るさが一変します。
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もう、この演出だけでコーヒーが美味しかったのだと一発で分かりますよね。
マンガや活字では真似できないアニメならではの良さが完全に活かしきれています。
カブの冬支度で小熊はカブにハンドルカバーを付けますが、礼子は嫌がります。ハンドルカバーが届いて早速カブに取り付けた小熊が向かった先は礼子の家。小熊のカブに試し乗りした礼子もハンドルカバーを買ってしまいます。嫌がっていた礼子にハンドルカバーの良さを教えようとする小熊の強情さも、ハンドルカバーの良さを実感して思わず買ってしまう礼子の素直さも、買うハンドルカバーがお揃いという二人の仲の良さも全てにほっこりさせられます。
椎のイタリアへのこだわりが小熊のカフェへの価値観を変えるなど、ちょっとした要素が生み出すちょっとした変化もしっかりと描いているあたりも素晴らしいです。
それにしても礼子は色々なことに詳しすぎます・・・。
第9話 「氷の中」
ストーリー的には一話ごとに一つの話が完結されるようになっていますが、ちょっとした伏線を回収するのを忘れないのがこのアニメの良いところです。小熊が礼子と一緒にお昼を食べる時に前回の話で購入したメスティンをちゃんと使っています。しかもご飯の上にかけるのが以前のレトルトからさばのみそ煮缶にレベルアップ(?)しています(笑)
冒頭の流れからカブにシールドを取り付けるのかと思いきや、先に椎がアブラッシブウールのカーディガンをくれることに。それにしてもアブラッシブウールの知識まで備えている礼子に知らないことは存在するのでしょうか・・・。すぐにアブラッシブウールでライナーを作ってくれる家庭科教師の仕事の早さにもビックリさせられました。
Bパートでは冒頭のアレ・・・ウィンドシールドを買いに行きます。前回のハンドルカバーと同様に礼子は嫌がりますが、結局機能性に惹かれて二人ともカブにシールドを取り付けます。
ハンドルカバー→ライナー→シールドと着実に防寒対策している小熊。ライナーはアブラッシブウールというのは、一つだけレベルが高すぎますが・・・。
アブラッシブウールのライナーを付けて走った時といい、ウィンドシールドを付けて走った時といい、その効果を実感した時の小熊の心の晴れやかさは画面からも伝わります。
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※アブラッシブウール時
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※ウィンドシールド時
こういった画面効果による演出は『スーパーカブ』では当たり前になっていますが、今回は椎のちょっとした表情の変化による演出にも強いこだわりが見えました。
※弁当を一緒するときの嬉しそうな表情
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※カブで置いてけぼりくらってしまった表情
顔の向きも帰ることで左折した小熊達を最後まで目で追っているのが伝わります。
※カブに嫉妬している表情
その他にも椎の様々な表情が描かれていますがセリフで視聴者に伝えるのではなく、しっかりと作画で伝えることができていて素晴らしいです。
今週も存分に楽しませて頂きました。
小熊の「あんなカブを欲しがるのはバカ」には思わず笑みがこぼれました(笑)
第10話 「雪」
今回も素晴らしかったです。もうお馴染みになっているいつも通りの画面の明るさによる小熊の心模様の描き方はもちろんですが、今回はそこにさらにプラスしてきました。
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まず画面効果ですが、雪でテンションが下がり小熊の目には空が暗く見えていましたが、チェーンを取り付け一面の雪原を目の前にして走り始めた小熊の目に空は絵に描いたようなブルーに見えていました。
これだけでも小熊の心情は視聴者に十分に伝わりますが、Aパートの終わりにはカブのエンジン音しか無かったのにBパートの始まりには軽快なBGMが掛かります。これにより小熊の心情はもちろんですが、カブの疾走感や転んでいるのに楽しさが伝わってくる演出となっています。
チェーンを取り付けるシーンでのお互いのカブの取り付け状況をチェックするところは二人の信頼関係や仲の良さ、安全に対しての意識など様々なものが詰まっていてとても良かったです。
今回の終わりは椎が川にモールトンで落ちて動けなくなり電話で小熊に助けを求めて終わりますが、『スーパーカブ』で次回に話が続いて終わるのは今回が初めてで、続きがとても気になってしまいます。
冬に半袖でカブは寒すぎですが、冬の川はさらにヤバ過ぎます・・・。
第11話 「遠い春」
内容や構成には不満は無いのですが、今回は今までよりも少し作画のクオリティが低かった様な気がします。本当にそれだけが少しだけ勿体無い気がしてしまいます。
比較的BGMが掛かることの少ない『スーパーカブ』ですが、今回は冒頭からBGMが掛かり前回の続きの重苦しい雰囲気が演出されていて、冒頭から引き込まれてしまいます。
その後からの椎のモールトンが壊れてしまったネガティブな空気感など、いつも通りの暗めの画面で十分に発揮されていました。
そんな中アニメの終盤で小熊がみんなを追いかけていたのは自分だったことに気づいたときの画面の演出は秀逸です。
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ただこれだけではありません。
みんなを追いかけていた時の回想のシーンでは第1話のアバンタイトルの通学場面が流れます。
ここで椎がモールトンで小熊を追い抜いていて、それを小熊が追いかけているという伏線が11話で回収されました。しかし、ただ回想を流したわけではありません。この第1話のシーンを回想で流したように思えますが、第1話での小熊の心の明るさと、今回自分が追いかけていて自分が追いついていたことに気づいてからの小熊が当時の自分を思い出したときの頭の中に甦ってくる回想では、当時のことが色づいて見えているということで同じシーンの使い回しではなく画面の明るさが全然違いました。
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ちょっと私の中でも説明が上手くできていないかも知れませんが、画像を見ていただければ一目瞭然だと思います。
このまま素晴らしい最終回を迎えて頂きたいです。
第12話 「スーパーカブ」
桜を見る為だけに佐多岬に女子高生がスパーカブで行くというちょっと無茶な気もするが青春を感じることができ、冒険心をくすぐられてしまう最終回になっています。
出発してからの3人の晴れやかな気分が画面の明るさにも現れていて、観ている側も晴れやかな気分にさせられます。
スーパーカブとの出会いが小熊という一人の女の子を変えていくストーリーが1話から12話を通して描かれていて、その成長の過程が話数が進むごとに目で見て取れる作品に仕上がっていました。また、小熊だけでなく礼子や椎といった最初はただのクラスメイトだった二人が変わっていく様も楽しめます。
1クールでキレイな終わりを迎えましたが最後には椎もカブを購入するという今後はカブ乗り3人の女の子達の話も気になり、是非とも2期をやってもらいたいと思わせる完璧な終わり方でした。
カブを購入した椎の笑顔を見てしまったら続きが気にならないわけがありません。
いつもは曲がらない交差点をカブに乗り始めた小熊は右折することもあるようになりましたが、最終回ではその交差点を、友達もいないと言っていたはずの小熊が3人で左折をするという印象に残るシーンもありました。スパーカブがあればどこにでも行けるのです。
~総評~
素晴らしい作品です。観ていない人には是非とも観て頂きたいオススメできる作品となっています。スーパーカブというものを知らなくても楽しめる作品どころか、知らない人が観ればスパーカブが欲しくなってしまう作品に仕上がっています。
構成や演出なども秀逸な仕上がりになっています。BGMを掛けずにエンジン音などだけを聞かせるよな演出にもよりリアリティを感じることができ、自分もスパーカブにてどこかに行ってみたいと思わせるそんな空気感があります。
個人的な意見になりますが2021春のアニメではNo.1でした。もしかしたら、2021年の中でもNo.1の可能性があるほどの作品です。
是非とも『スパーカブ』の2期の製作及び放送をお願い申し上げます。
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